1 はじめに
本旅行は、自由法曹団京都支部60周年企画の一つです。この企画は、現在、沖縄南西諸島において、自衛隊基地の配備・拡充が急速に進められてきていることから、実際に沖縄南西諸島に赴き、実態を知っておきたいという団員の発案により2023年4月下旬より進められて来ました。その際、単に島を見て回るだけでは、観光であって、沖縄南西諸島の実態を知ることはできないという話になり、地元の方々のお話を聞く機会、交流する機会を設け、調査・学習し、同時に広大な自然と触れ合うという企画となりました。
2024年3月9日から3月14日まで、石垣島、与那国島、宮古島巡る本旅行に、総勢21名が参加し、当事務所からは、村山晃、森川明、飯田昭、岩橋多恵、糸瀬美保、森田浩輔、尾﨑文紀、前田修平の8名が参加しました。
2 沖縄南西諸島の実態を知る
実際に、各島の自衛隊基地を視察し、地元の方々からお話を聞かせて頂いたところ、住宅や集落、農地の目の前に自衛隊基地があり、迷彩服を着て通勤することもあり、非常に怖いとのことです。一度基地が出来てしまえば、その後の情報は地元の住民であっても知らされません。
石垣島自衛隊駐屯地には、3棟の弾薬庫が完成しており、民家との距離はわずか250m程度と聞かされ驚きました。基地はまだ完成しておらず、さらなる弾薬庫や訓練場・射撃場の建設が予定されているとのことです。
宮古島の陸上自衛隊駐屯地では、弾薬庫は作らないという当初の説明に反し、弾薬庫が建設され、自衛隊内部では、失火した場合2分以内に2kmは遠くへ逃げろという通達がされたにもかかわらず、弾薬庫から600m圏内の住民には何も伝えられていませんでした。
与那国島においても、2020年に自衛隊駐屯地にミサイル配備の話が持ち上がり、情報を有するはずの町長が説明を行わず、住民にはミサイル配備についての情報が行き渡らないとのことです。また、与那国島の嶋中自治公民館で地元の方々から、与那国島は住民が話し合いみんなで決める「自治」「自立」島であるが、現在は、国の自衛隊政策の言いなりになってしまっており、与那国島の「自治」「自立」を取り戻したいとのお話を聞かせて頂きました。
3 もう一つの沖縄戦、戦争マラリア
私は、旅行初日、石垣島にて、戦争マラリア犠牲者慰霊碑と八重山平和記念館を訪れ、そこで初めて、沖縄であった戦争マラリアのことを知りました。「戦争マラリア」とは、マラリアのない地域からマラリアにかかるおそれのある地域へ、住民が強制的に避難させられたことで、マラリアにかかってしまったことをいいます。その被害は甚大で、例えば、八重山においては、人口の約半分がマラリアにかかり、5人に1人が亡くなっています。
政府の都合により島民が甚大な被害を受けたことにつき、悲しさと怒りを覚えました。そして、現在は戦争マラリアは根絶されているとのことでしたが、その補償が全て終わっているわけではないとのことです。2025年には、戦後80年を迎えますが、それでも戦争被害を補償できていないのが現実です。一度起きた戦争は終わらない。戦争自体を絶対に起こしてはならないと実感しました。