1 はじめに
私たちが購入する電化製品などには、「純正品」と「非純正品」があります。「純正品」は、製品を製造・販売するメーカー自身が製造・販売している商品です。
「非純正品(社外品)」は、製品を製造・販売している会社以外の他社が、製造する商品です。
「純正品」と「非純正品(社外品)」は、サポート、信頼性の点で異なります。例えば、本件掃除機を製造・販売するダイソン社は、本件掃除機の取扱説明書において、「本製品の充電には、弊社の充電器のみを使用してください。また、弊社のバッテリーのみを使用してください。他のバッテリーをご使用になると、けがや本製品の破損につながりうる破裂を起こす可能性があります」と警告しています。
また、経済産業省は、ホームページ上で「充電式の電気掃除機や電動工具の事故が急増し、2014年から2019年までの6年間で72件の事故が報告されている」ことを紹介しています。
このように、家電製品に非純正品のバッテリーを使用した場合にこれが発火する可能性があることは報道等がなされていますが、他方で、非純正品バッテリーは広く流通しており、これが発火することは、全体の流通量からすると稀なケースと言えます。
では、購入者は、「非純正品」バッテリーが発火した場合、販売者に責任を求めることはできるのでしょうか。
2 事案の概要
販売者(以下「被告」と言います)は、インターネット上のオンラインフリーマーケットアプリ(以下「メルカリ」と言います。)において、ダイソン社の掃除機を相当数販売していました。購入者(以下「原告」といいます。)は、被告による「社外品ですが新品互換品バッテリーは安心です」との商品説明を信頼して本件掃除機を購入しました。
ところが、購入から1年ほど経過したころ、本件掃除機に取り付けられたいた非純正互換品バッテリーが発火し、原告宅で火災が発生しました。原告は、火災の責任は、被告にあると主張して、被告に対し、損害賠償請求を行いました。京都地方裁判所は、原告の被告に対する損害賠償請求を認めました。本件の主要な争点は、①被告に火災発生の責任があるのか②原告にも落ち度(過失)があるのかという点です。
3 京都地裁判決の判断
(1)被告の火災発生の責任
本件掃除機の取扱説明書には、本件掃除機製造会社のバッテリー(純正品バッテリー)のみを使用してくださいとの記載があるにもかかわらず、被告が、非純正互換品のバッテリーを取り付けた上、商品説明として「社外品ですが新品互換品バッテリーは安心です」と記載して販売している以上、被告は、本件バッテリーについてその安全性を調査確認する義務を負うというべきであるとして、京都地方裁判所は、被告に調査義務があることを認めました。
その上で、京都地方裁判所は、被告に債務不履行があるとして、被告に火災発生の責任を認めました。
(2)原告にも落ち度(過失)があるのか
被告は、「本件売買契約時、本件掃除機に非純正互換品バッテリーが取り付けられていることは明示されていたから、これを知って本件掃除機を購入した原告にも相応の落ち度がある」と主張しました。
この点について、京都地方裁判所は、被告が、メルカリでダイソン社の掃除機を相当数販売しており、原告は、被告による「社外品ですが新品互換品バッテリーは安心です」との商品説明を信頼して本件掃除機を購入したこと等から、過失相殺を否定しました。
(3)まとめ
本件は、家電量販店での購入ではなく、インターネット上のオンラインフリーマーケットアプリである「メルカリ」での購入という事情がありましたが、被告の「過失」という論点について、あらゆる角度から主張を行い、上記のとおり、被告の責任が認められ、損害賠償請求を勝ち取ることができました(控訴されず確定)。

弁護士