弁護士コラム

別荘地の管理費用を負担しなければならないとした最高裁判決

1 別荘地の管理費用を管理会社から請求されるケース

 6月30日,最高裁判所は,別荘地内に土地を所有する人が当該別荘地の管理会社に対し管理費として相当と認められる額の支払義務を負うとの判決を出しました。

 バブル期の大規模なリゾート開発などにより,このような別荘地は全国にたくさんあります。その別荘地を相続によって取得したが管理会社から管理費用の請求を受けたというご相談もいくつもあり,判決の影響も考えられますので,ご照会します。

 

2 裁判となった事案の概要

 Yさんは1993年に栃木県の那須塩原市にある別荘地の一区画を購入しましたが,建物は建てておらず,土地も利用していませんでした。

 その別荘地全体を管理していたのはX社です。X社は土地所有者との間で個別に管理契約を締結し,その管理契約に基づいて保守点検や見回り,草刈り,清掃などの業務を行っていました。

 しかしYさんはX社と管理契約を結んでおらず,X社から管理費用やその相当額の請求を受けましたが,管理契約がないことを理由に請求を拒絶していました。

 そこで,X社がYさんに対して管理費用相当額の支払いを求めたのが本裁判です。

 

3 逆転でX社の請求を認めた最高裁判所

 原審である高等裁判所はX社の請求を棄却しました。その理由は,管理契約がないことに加え,X社の管理業務が当該土地の経済的価値に与えた影響が不明だということでした。

 しかし最高裁は同判決を取り消し,一転してX社の請求を認めました。現在も別荘地として多くの人が利用していること,X社の管理行為によってすべての別荘地所有者が利益を享受することに加え,管理契約を締結している人と締結していない人との間での公平の観点,管理業務を別荘地所有者が個別に行うことは困難で地方自治体による提供も期待できないこと,などを理由として挙げています。

 

4 本最高裁判決の影響は?

 本件は別荘地を購入した場合で,管理契約を締結しておらず,現在もその別荘地を利用している人がおり,管理もきちんと行われている場合でしたが,相続によって取得した場合も同じような判断になるかはまだ分かりません。少なくともまともな管理が行われていないような場合は,別荘地所有者が利益を享受しているとはいえないため,異なる結論になるのではないかと思います。

 他方,もともと管理契約を締結している場合は,相続によって当該管理契約も引き継がれることになりますから,基本的には管理費用の支払義務も引き継がれることになるでしょう。時効の主張ができればその部分では請求を免れることができますが,そうでない場合は法的にはなかなか難しいと思われます。

 もし管理費用の請求を受けた場合は,契約の有無や管理状況を確認するようにしましょう。