弁護士コラム

法的には他人と言われて
連れ子との養子縁組 なかったら相続できない?!

連れ子との養子縁組

3組に1組は離婚すると言われている現代、連れ子再婚も珍しくなくなりました。

とある相談者様は、産まれてすぐ両親が離婚し、父が親権者となりました。その後、父は再婚。何十年もの間、継母と暮らしていましたので、実の母娘同然の関係でした。父が亡くなった後は、ずっと仕送りをしていましたし、最期も看取りました。
葬儀等がひと段落し、預金の相続手続をしようと思い、戸籍を取り寄せて銀行の窓口へ出向いたところ、『あなたは法的には他人なので、手続きできません」と言われてしまったと、当事務所を訪ねて来られました。
持参された戸籍を確認すると、相談者様と継母は養子縁組をしておらず、たしかに法的には赤の他人だったのです。

連れ子再婚すると、カップルは妻となり、夫となります。法的には、相互に扶助義務を負い、いずれかが死亡した場合には、相続人となります。
しかし、連れ子と継親との間には、当然には法的な親子関係が発生せず、「他人」のままです。相互に扶助義務を負うこともなければ、相続人になることもありません。そこに法的な親子関係を発生させようと思うと、養子縁組が必要なのです。

長年、実の母娘同然の生活を送ってきた相談者様は、養子縁組がなされていないこと、それにより各所から「他人」扱いされることにショックを受けておられました。一体、どうして・・・と。

一昔前だと、法的な知識がなく放置されたというケースが多かったようですが、最近は離婚後も実親から養育費を貰い続けるために敢えて継親と養子縁組しないケースもあります。

いずれにせよ、継親亡き後で養子縁組はできません。そこで、継母の戸籍を辿って相続人(本件では継母の兄弟姉妹)の所在を調査し、弁護士が代理人として、お手紙を差し出しました。
上記の事情で法的には他人ですが、長らく実の親子同然に過ごし、晩年も入院費を立て替える等して支えた「娘」として、相続分をお譲り頂けないかというお願いの手紙です。

様々な反応が返ってきました。
長年、相談者様自身と交流のあった方々からは、「養子縁組していなかったなんて信じられない」「貴女は間違いなく娘だよ」と、快く相続分譲渡の書類が返ってきました。
相続人全員から相続分譲渡の承諾が得られれば、相談者様が預金の払い戻し手続きを行うことができました。
しかし、全く交流のなかったAさんからは何の音沙汰もなく、Bさんからは、あくまでも相続分に相当する金銭を渡してもらいたいという回答が返ってきました。
このままでは、相談者様が預金の払い戻し手続きを行うことはできません。

そこで我々は、AさんとBさんに対し、遺産分割の調停を起こしました。
結局、Aさんは裁判所から呼び出されても反応はありませんでしたが、Bさんは出頭してきました。その席で、裁判官が次のような審判をしてくれました。

被相続人(継母)名義の預金は全て相談者様が取得する。その代わり、相談者様はAとBに、その相続分に相当する金額を代償金として支払う。

これにより、相談者様は無事、預金の相続手続をすることができました。

継母が養子縁組をしてくれていなかった事実を前にショックを受けていた相談者様ですが、継母の兄弟姉妹からの温かい言葉に救われた気持ちがしたと、最後には笑顔でお別れでき、良かったです。

よく、家族の形に血の繋がりは関係ないと言われますが、法的な手当は必要です。
ステップファミリーの当事者の皆様、少しでも疑問や不安があれば、お気軽に弁護士をお訪ねください。