弁護士コラム

ゴルフ会員権を相続 預託金の返還を求める

一昔前、ゴルフクラブの会員権が高値で取引されていた時代がありました。

ゴルフクラブの会員権とは、預託金と言われる入会金と年会費を支払うことで、ゴルフクラブの施設を優先的な条件で利用することができるというものです。

預託金は5年、10年といった据置期間が会則に定められており、据置期間経過後に退会の申し出をすれば、会員資格の喪失と引き換えに返還されます。

ゴルフ会員権の市場価値が預託金を上回っていれば、退会希望者は第三者に会員権を売却することで資金回収をはかります。
しかし、ゴルフ会員権の市場価格が暴落し、預託金額を下回るようであれば、退会希望者は預託金の返還をゴルフクラブに求めます。
実際、バブル崩壊後に多数の会員が預託金返還をゴルフクラブに請求したことで、ゴルフクラブ運営会社の経営状況が悪化しました。
そこで、ゴルフクラブの理事会等で据置期間の延長決議がなされ、法的紛争になりました。

最高裁は、「天変地異その他クラブの運営上やむを得ない事由がある時は、理事会、ゴルフクラブ経営会社の取締役会の決議などにより、据置期間の延長をすることができる」との会則を有するゴルフクラブに対する預託金返還請求訴訟において、預託金の据置期間の延長決議は無効であるとする控訴審判決を支持しています(最二平11.10.8)。

相談者様は、お父様が生前に預託金をおさめて契約したゴルフクラブ会員権を相続していましたが、ゴルフクラブから据置期間の延長に関する同意書が送られてきたと、当事務所に相談に来られました。

裁判所の判断は上記のとおりですが、会員の同意が得られれば、据置期間を延長することは可能です。
そこで、特にゴルフもしないし預託金の返還を希望するのであれば、同意書は提出せず、むしろ退会届を提出のうえ、預託金の返還請求をすべきだと助言しました。

後日、相談者様が再相談に来られました。退会は認められたけれど、「財政状況が悪くて年間1件しか返還に応じられない」「貴殿への返還は10年後」という信じられない回答が返ってきたというのです。

そこで、弁護士が代理人となり、改めて預託金を返還すると、満額の返金(ただし5回の分割払い)に応じてきました。

ただ、裁判まで起こさなければ一切返還しない悪質なゴルフクラブもあります。
不合理な理由で預託金の返還を拒まれる場合には、一度弁護士にご相談ください。