弁護士コラム

機能性表示食品への十分な理解を

1 機能性表示食品で自主回収の動き

 先日から機能性表示食品による健康被害のニュースが流れています。大手医薬品メーカーの発売した機能性表示食品であるサプリメントに含まれていた原料が原因と目され、しかもその原料は国内外50社以上に向けて販売されていたそうです。いま、自主回収の動きが進んでいます。今後の動きが注目されます。

 

2 そもそも機能性表示食品とは?「トクホ」との違いは?

 そもそも「機能性表示食品」とは何でしょうか?

 その点については、2019年秋の「「表示」に惑わされない 〜「機能性表示食品」と「安心R住宅」〜」という記事(https://www.daiichi.gr.jp/publication/makieya/p-2019f/p-01)の中で、機能性表示食品は安全性や有効性について国が審査を行っておらず、事業者が独自に調べていること、国との関係では許可制ではなく届出制だということ、消費者庁の行った調査では、機能性表示食品の科学的根拠となる研究レビューのうち80パーセント近くに何らかの不備があったこと、などを書きました。

 似たようなものに「トクホ」=「特定保健用食品」がありますが、こちらは、食品の安全性や有効性について国が審査を行い、販売を許可していますので、「機能性表示食品」とは大きく異なります。

 しかし、2023年3月の一般消費者を対象とする調査(「令和4年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」)では、「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」について、「聞いたことはあるが、どのようなものか知らない」という回答が60%を超えており(Q34)、「機能性表示食品」について「事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示したものである」と正しく選択した人は15.2%にとどまり、逆に「表示されている効果や安全性について国が審査を行っている」と間違った回答をした人は17.9%にもなりました(Q45)。残念ながら「機能性表示食品」のことを正しく理解している方はとても少ないと言わざるを得ないのです。

 

3 見直しの議論も必要では

 食品は体内に入るものであるだけに、安全性をきちんと確保すること、消費者に適切な情報提供をすることが強く求められます。しかし、メーカーが利益を優先するあまり安全性や機能性が十分にチェックされているのか、疑念なしとしません。利益を追求した結果安全性が疎かになり被害を発生させるというのは、食品に限らず過去何度も繰り返されてきた事態です。日本弁護士連合会も機能性表示食品に関して複数回意見書を出していますが、今回の事件も起こるべくして起きたといえるかもしれません。

 機能性表示食品の市場は7000億円とも言われています。今回の事件を機に見直すべき時に来ているのではないでしょうか。