弁護士コラム

『京都大学による一方的な賃金引き下げは無効』と求めて提訴 ~就業規則の変更による労働条件の不利益変更は無効

『京都大学による一方的な賃金引き下げは無効』と求めて提訴
~就業規則の変更による労働条件の不利益変更は無効~

2013年6月11日、京都大学教職員ら96名が原告となり、「京都大学による一方的賃下げ無効・未払い賃金訴訟」を京都地方裁判所に提起しました。原告96名(54名の教員、42名の職員)は、全員、京都大学職員組合の組合員です(元組合員も含む)。今後、順次、原告は追加され、100人以上の原告団となる予定です。

同様の訴訟は、福岡教育大学、富山大学、新潟大学、山形大学等の各地域の大学でも行われており、その中でもとりわけ本件訴訟の特色の一つとしては、原告の数の多さがあげられます。

国立大学の教職員は、2004年に大学が法人化されたことによって、民間の労働法制が適用されることになりました。ところが、京都大学は、国からの震災復興財源確保のための「要請」を理由として、組合や教職員と何ら合意することもなく、教職員の賃下げを強行しました。

具体的には、京都大学は、組合と団体交渉そのものは行なったものの、それは極めて形式的なものにすぎませんでした。2012年6月に1回、7月に3回、団体交渉に京都大学は応じましたが、団体交渉での対応は、「大臣の要請」「運営費交付金削減の可能性があること」「社会的責任」等を賃下げの理由として挙げるのみで、なんら財政上の具体的根拠を示すことはありませんでした。

にもかかわらず、京都大学は、就業規則の一部を変更し、2012年8月1日から、一方的に教職員の賃金の賃下げ(最大4.35%)を実施しました。

賃金とは、労働者の生活を支えるために最も重要なものです。その重要な賃金を一方的に引き下げるという暴挙を京都大学は行ったのです。

本件訴訟においては、とりわけ、①賃金減額そのものが、労働者に重大な不利益であること、②賃金減額の必要性がないこと、③労働者への説明がなされていないこと、すなわち、実質的な団体交渉がなされていないこと、に力点をおいて主張をしています。

京都大学による一方的な賃下げが明らかに違法であることを主張し、減額された賃金を支払わせて労働者の生活を守るために、我々弁護士も尽力し続けていく次第です。

尚、本件は、当事務所の弁護士村山晃、岩橋多恵、渡辺輝人、谷文彰と私が担当しております。

記者発表する原告代表と弁護団

記者発表する原告代表と弁護団