まきえや

消費税の二重どりを許さず、税制・税務行政をただす 今西税金裁判、始まる

[事件報告 3]

消費税の二重どりを許さず、税制・税務行政をただす 今西税金裁判、始まる

法廷

4月9日午後、50人を超える満席の傍聴人が見つめる京都地方裁判所203号法廷。

この法廷に、京都府山科民主商工会会長今西和政さんの凛とした声が響きました。

「私は、皆、家族や従業員を幸せにしてやりたい。豊かにしてやりたい、また平和で安心して暮らせる国であってほしいと考え、長引く不況の中で努力を重ね納税しているのです」、「いま、日本を戦争する国にしようという人たちは、国民が自由にものを言ったら困るらしい。だから私が税務行政にものを言ったら、私の質問に一切答えないまま、青色申告承認取り消し、消費税の仕入れ税額控除否認し消費税を二重取りする処分をしてきたのです」、「私は、この裁判を通して、一人ひとりの人格や権利が保障され、住んでいて良かったと思えるような国であって欲しいと願いつつ、納税者の権利制定、民主的な税務行政が行われるよう求めて、私の陳述といたします」

今西税金裁判の第1回口頭弁論期日における今西さんの意見陳述です。

今西和政さん

今西和政さんは山科民商の会長です。1974(昭和49)年10月、父亡き後、家業を引き継ぎ、今西組の屋号で土木事業を営んで今日に至りました。

今西さんの仕事は「基礎工事」です。土の中に隠れてしまう仕事ですから、一層丁寧な仕事を心掛けています。「みえなくなる」からといって、いい加減な仕事は出来ません。「みえなくなる」からこそしっかりとした仕事が要求されるのです。

今西さんは、オイルショックやバブル崩壊、信用金庫破綻など「失われた10年」の経済環境のもと得意先の倒産で幾度となく大変な目にあってきましたが、取引先の協力、励ましに支えられて、歯をくいしばって働いてきたのです。

税務調査

今西さんは、2001(平成13)年7月、自宅に税務署員2名の突然の訪問を受けました。当然のことながら、今西さんは、「調査の理由は何か」、「どうして事前に連絡がなかったのか」尋ねました。ところが、税務署員は、「所得の確認」というのみで、事前通知もなければ、その理由も言わず、やっとのことで「概括的理由はないがあなたにある」などと意味不明のことを言うばかりだったのです。

税務署員は、この年の12月までに4回今西宅にやってきて調査をしています。この間、同年9月の調査では、今西さんは帳簿資料を2人の税務署員の目の前に置いて調査に応じました。ところが、税務署員は調査の席に第三者(立会人)が同席していることを口実に、調査をしようとせず、調査を放棄して帰ってしまったのです。

2002(平成14)年3月4日、今西さんは東山税務署長から、「帳簿類の確認ができない」、「青色申告にかかわる帳簿類の備え付けがない」として、青色申告承認取消処分、所得税や消費税総額3000万円もの更正処分をうけたのでした。「そんな馬鹿な」と思われるでしょう。しかしながら、人権を無視した権力的な税務調査と徴税、これが日本の税務調査・税務行政の実態なのです。

消費税の二重取り

消費税が導入されて、15年が経過しました。消費税が天下の悪法であることは衆知の事実です。消費税は、日本国内消費の売上げに課税されます。導入後15 年間の消費税の増収分は地方消費税を含め約136兆円で、同時期の法人3税(法人税、法人住民税、法人事業所税)の減収分を超えています。消費税は国の税収入の重要な一翼を担うまでになっているのです。人権を無視した権力的な税務調査と徴税は、この消費税導入と深くかかわっています。

1 今西さんは仕事をして、請負代金に消費税を加算した金額の支払いをうけているわけですが、この仕事で得た消費税をそのまま納めるわけではありません。

2 今西さんは仕事に際し、「基礎工事」するのに必要なセメント等資材を購入します。この時に今西さんはセメント納入業者に消費税を支払っているわけですが、今西さんが納める消費税は、今西さんが事業者として受け取った消費税からセメント納入業者に支払った消費税を差し引いた金額なのです。消費税法30条1項が「課税仕入れに係る消費税(セメント購入に係る消費税)の合計額を控除する」と明記しているのがこれです(これを「仕入税額控除」といいます)。

3 ところで、仕入税額が控除されるためには、セメント納入業者に支払った消費税に関する「帳簿及び請求書等」を「保存」していなければなりません(消費税法30条7項)。

  • 今西さんは、仕事に際し、毎日丁寧に帳簿をつけています。今西さんは「私の作成している帳簿書類は1つの物語となっています」と意見陳述しました。帳簿を見れば、何時、どの工事についてどのような材料を使ったのかを克明に記しているから「物語となっている」のです。今西さんが消費税法30条7項にいう「帳簿及び請求書等」を「保存」していたことは明らかですし、だからこそ調査の際、段ボール箱7箱に入れて、この帳簿類を税務署員の目の前に差し出すことができたのです。
  • ところが、税務署は、調査の際、第三者が立ち会っていることを理由に調査しようとせず、調査を放棄して帰ってしまい、このことをもって今西さんからは「帳簿及び請求書等」の「提示」がなかった、これらを「保存」していなかった、これでは消費税法30条7項の要件を充していない、したがって仕入税額控除は認めないとの論理で更正処分を課すのです。

ご支援を

消費税は赤字でも課税されます。商売をすると必ず仕入があります。仕入れに係る消費税が差し引かれるのでなければ、請負代金の消費税分丸ごとを納めることになり、営業に与える打撃は所得税の比ではありません。仕入税額控除否認は、まさに営業破壊行為そのものなのです。

欧米諸国の納税者憲章では、立会人を認めるのが常識です。日本の税務行政における立会人拒否は、世界の流れに逆行しています。日本でも納税者憲章を制定させ、消費税法30条7項の削除、消費税そのものを廃止することが求められています。

本年3月20日、支援する会が発足しました。その名もずばり、今西さんの税金裁判勝利を勝ち取り、「消費税の二重取りを許さず税制・税務行政をただす京都山科の会」です。

次回裁判は、来る6月2日午前10時30分、京都地方裁判所1号法廷(大法廷)です。満席にする応援をよろしくお願いします。 (04.4.19記)

「まきえや」2004年春号