まきえや

建設アスベスト被害の全面救済を目指して歩みは続く

1 建設アスベスト訴訟の現状

建設現場でアスベスト建材を取り扱い、アスベストに曝露して石綿肺、肺がん、中皮腫などの重篤な病気になられた方(大工、左官、電工、配管工などの建設職人の方)とそのご遺族の方が、アスベスト建材を製造・販売した建材メーカーと規制を怠った国とを相手に謝罪と賠償を求める建設アスベスト訴訟は、2021年5月17日の最高裁判決によって原告側が全面勝利しました。

これを機に国は法律を制定して救済制度を設け、たくさんの方が救済を受けています。当事務所でお手伝いもさせていただいています。しかし建材メーカーは、最高裁で断罪されたにもかかわらずなお争いをやめようとせず、裁判を続け、完全解決を見ることなく亡くなられる方が後を絶ちません。建材メーカーも救済制度に参加させ、分け隔てのない全面的な救済を実現するために、いまなお全国で多くの方が立ち上がり、闘いを続けています。

今回は建設アスベスト訴訟に関する特に重要な動きについてご報告します。

2 関西建設アスベスト京都訴訟・二陣訴訟で勝利判決!

1つめは、2023年3月23日、関西建設アスベスト京都二陣訴訟の判決が京都地方裁判所で言い渡されたことです。内容は建材メーカーの賠償責任を認めるもので、原告勝訴!建設アスベスト訴訟で建材メーカーの責任を初めて認めた2016年1月29日の京都一陣訴訟判決から数えて18度目の断罪となりました。建材メーカーはいったいいつまで争いを続けるのでしょうか。その間にもたくさんの被害者が苦しみ、亡くなられています。一刻も早く解決しなければなりません。

この関西建設アスベスト京都二陣訴訟は、被害者30名が闘う裁判です。判決は1975年10月1日以降の建材メーカーの警告表示義務違反を認め、概ねシェア10%を基準に建材メーカーを選定し、各被害者との関係で責任を負うべきメーカーをピックアップしました。2021年5月17日の最高裁判決の基準からすれば当然の結果といえるでしょう。

もちろん今回の判決にも不十分な点があり、免責してしまった建材メーカーがあることや解体作業との関係での責任を認めなかったことなどは克服すべき点です。

3 建材メーカーとの間での和解が成立

2つめは、建材メーカー1社(株式会社ノザワ)との間で和解が成立したことです。特殊な事例を除けば建設アスベスト訴訟で建材メーカーとの和解が成立したのは初めてのことで、全面解決への大きな一歩になります。

今回建材メーカーとの間での和解が成立したのは首都圏建設アスベスト神奈川一陣訴訟の原告のうち、左官である4名です。この訴訟は2021年5月17日の最高裁判決によって東京高等裁判所に差し戻され審理が続いていたもので、2022年11月22日の結審にあたって裁判所からなされた和解勧告を受けて和解成立となりました。

左官の方は株式会社ノザワが大きなシェアを占めていた混和材(テーリング)を日常的に使い、アスベストに曝露していたことが私たちの調査で判明しています。左官の方であれば同じように多くの方が株式会社ノザワに責任追及できると思われます。全体の原告数・被害者数からすれば少ない数かもしれませんが、特殊な事例を除けば建設アスベスト訴訟で初めての建材メーカーとの和解成立、大きな意義があります。

4 今後に向けて

関西建設アスベスト京都二陣訴訟は建材メーカーの控訴もあり、大阪高裁に舞台を移しました。首都圏建設アスベスト神奈川二陣訴訟はその後5月31日に高裁判決があり、改めて建材メーカー5社が断罪されましたが、不当にも上告したため最高裁判所での闘いが続きます。6月30日には大阪二陣・三陣訴訟でも判決が下され、過去最多の建材メーカー12社が断罪されました。

京都では三陣訴訟も係属しているほか、全国各地で建材メーカーを追い詰める闘いが続きます。当事務所も引き続き力を尽くす決意です。