まきえや

今、同性婚の法制化を

1 同性婚を認めないのは「違法状態」

2023年6月8日、同性同士の結婚が認められていない民法の規定は、婚姻の自由や法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、同性カップルが国を訴えた裁判の判決がありました。福岡地裁は、「同性カップルに婚姻制度の利用によって得られる利益を一切認めず、みずからの選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていないことは憲法に違反する状態にあるといわざるを得ない」と述べ、個人の尊厳に基づいて配偶者の選択等に関する法律を制定するよう定めた憲法24条2項に違反する状態だと判断しました。

民法739条1項は「婚姻は戸籍法の定めるところにより届け出ることによってその効力を生ずる」とし、戸籍法74条1号は、婚姻をしようとする者は「夫婦」が称する氏を届け出なければならないと規定しています。そのため、同性カップルが婚姻届を提出しても受理されないのです。

2 これまでの司法判断

同性カップルが2019年に全国5か所で起こした集団訴訟の判決で、合憲であるとしたのは大阪地裁のみで、福岡地裁と東京地裁は憲法24条2項に違反する状態であると判断し、名古屋地裁と札幌地裁は憲法14条ないし憲法24条2項違反であるとしました。ただ、大阪地裁も、社会状況の変化によっては今後、憲法違反になりうると言及しており、いずれも同性カップルを法律上の家族と認める立法措置を国に促す形となっています。

札幌地裁は、2021年3月、「異性愛者と同性愛者の違いは意思によって選択できない性的指向の差でしかないのに、同性愛の人は婚姻による法的な利益の一部さえ受けられない。これは合理的な根拠を欠く差別的な取扱い」と指摘しました。また、2023年5月30日には、名古屋地裁が、「同性カップルに対し、その関係を国の制度として公に証明せず、保護するのにふさわしい枠組みすら与えていない」「性的指向という自分で選択や修正する余地のないことを理由に婚姻に対する直接的な制約を課している」と指摘しました。違憲状態とした2022年11月の東京地裁判決は、同性パートナーと家族になるための法制度が存在しないことにつき、「同性愛の人に対する重大な障害だ」と断言しました。

3 同性婚を認めないことによる重大な障害

たとえば、パートナーが亡くなった時、結婚していれば、遺言がなくてもパートナーの財産を相続できます。他方、結婚していなければ、どんなに長らく一緒に生活していたとしても、遺言なくして、パートナーに財産を残すことができません。

また、パートナーが病気やけがで意識不明になった時、結婚していれば家族としてパートナーを見守ったり医師から話を聞いたりできます。しかし、同性同士で結婚していなければ、法律上の家族ではない等として、それができないこともあります。

職場において、異性のパートナーを持つ人であれば受けられる各種手当や福利厚生を、同性パートナーでは受けられないということがあります。

4 今こそ同性婚の法制化を

日本社会は、同性愛者がパートナーを大切に想い、家族として社会生活を送りたいという、ごく「普通」の「当たり前」のささやかな願いを拒否してきました。しかし、最新の世論調査(2023年5月)では、63%の人が同性婚を法的に認めることについて賛成と回答しました。そのような国民意識の変化や、自治体のパートナーシップ宣言の広がり等も後押しして、冒頭の判決が下されるまでに至っています。

パートナーシップ宣言は、宣誓した自治体でしか活用できませんし、同性カップルと異性カップルを同様に扱うべきことを民間企業に義務付けることも出来ません。したがって、やはり同性婚の法制化が求められています。各地の裁判は、いずれも高等裁判所に控訴されています。司法判断の確定には、今しばらく時間がかかるかもしれません。しかし、今この時も、家族として認められず、辛い想いをしているカップルがいます。早期の立法解決を求め、声をあげ続けたいです。