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遺言-遺言の種類

遺言

2.遺言の種類

遺言書にはいくつかの種類がありますが、それぞれ作成方法などに違いがあります。それらをしっかり理解した上で遺言を書くことが重要です。

Q.遺言書にはどのような種類がありますか?それぞれの遺言のメリット、デメリットを説明して下さい。
A.遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、危急時遺言、秘密証書遺言などの種類があり、それぞれ作成方法などに違いがありますので、以下、説明します。

弁護士の立場からは、遺言の有効性についてトラブルになりにくい公正証書遺言がお勧めです。弁護士に依頼して遺言を作成することもできますので、お気軽にご相談下さい。

(1)自筆証書遺言

遺言のうち自筆証書遺言は、その名のとおり自ら自書して作成する遺言です。文字を書くことさえできれば誰にも知られることなく遺言を作成することができますが、その反面、要件が厳格で、無効になりやすいと言えます。

自筆証書遺言の要件は、一枚もしくは一綴りの書面に遺言の内容・日付をすべて自書し、署名・押印することです。これらの形式にミスがあれば無効になってしまいます。そのため、財産目録をつけようとすると、自書しなければならない部分が多くなり、負担が大きくなっていました。そこで、2019年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、財産目録についてはパソコン等での作成が、預貯金については通帳の写しの添付によることが、それぞれできるようになりました。その用紙一枚一枚に自署による署名・捺印が必要になりますが、これにより、作成の負担が大きく減ることになります。

また、自筆証書遺言の場合、遺言者が死亡したときには、原則として、相続人は家庭裁判所に「検認」の手続きを求めなければなりません。しかし、特定の法務局(「遺言保管所」)に保管して貰う新しい制度を利用することで、「検認」の手続を採らなくてもよいことになりました。これによってスムーズに相続手続きを進めることができますし、きちんと保管してもらうことで、紛失や処分、書き換えを防止することができ、トラブルを未然に防止することもできます。ただし、この制度を利用できるのは2020年7月10日以降です。

もっとも、自筆証書遺言の場合、内容が一義的に特定できず不明確だという理由で無効になることがあり、この危険性は常にあるといわざるを得ません。

(2)公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人による公正証書で作られる遺言です。公証人とは、ある事実の存在などを公権力を根拠に証明・認証する者で、公務員の一種です。

公的な立場から事実の存在を証明するので、公証人が作った書面には、非常に強い証明力があり、しかもその原本は公証人役場に保管されるので、自筆証書遺言のように偽造・変造されるおそれはありません。

この公正証書遺言を作成するには、相続人など利害関係の無い証人(こちらは公証人ではなく、普通の一般市民です)2人の立会いと、署名・実印による押印が必要です。

(3)危急時遺言

突発的な事故など緊急の場合、要件を緩和して遺言を作成することが認められています。これを危急時遺言といいます。

要件が緩和されているといっても、そのハードルは決して低くありません。しかも、死期が迫っている状態で自分の考えを正確に伝え、願い通りに遺産を遺すことができる人は多くはないでしょう。

遺言の有効性について争いになる場合も少ないとはいえません。

(4)秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま公正証書遺言と同様の手続で作成する遺言です。この方法であれば、遺言の内容を秘密にしたまま偽造・変造の危険を防ぐことができます。

しかし、遺言書が公証人のもとに残るわけではないので、紛失したり破棄されたりするおそれもあります。また、遺言の内容を公証人や証人が確認することもないので、方式に不備がある可能性や内容が不明確である可能性は自筆証書遺言と同様に存在します。