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ブラック企業による元従業員への損害賠償請求を「不当訴訟」と断罪

ブラック企業による元従業員への損害賠償請求を「不当訴訟」と断罪!

弁護士 谷 文彰2014年1月27日
弁護士 谷 文彰

1 典型的な「ブラック企業」の不当訴訟に損害賠償命令!

いわゆる「ブラック企業」として様々なタイプが挙げられますが、典型例の一つとして、退職を申し出た労働者に対し高額の損害賠償を請求すると脅して辞めさせないようにする、場合によっては退職後に実際に訴訟を提起する、という場合が挙げられています。今回の広島高等裁判所の判決(2013年12月24日)は、正にこのようにして、会社が退職した元従業員に高額の損害賠償を請求した訴訟において、会社による本訴提起は元従業員に対する不当訴訟であると認め、不法行為による損害賠償を支払うよう命じた判決です。

訴訟提起自体が不法行為であると認められるケースは非常に少ないのですが(現に、第一審では、全く同じ事実認定であるにもかかわらず不当訴訟であるとは認められませんでした)、この判決は、世のブラック企業に対して強い警告を与えるものです。真面目に働く労働者にとって、会社の不当な要求を毅然と拒絶することの正当性をも示しています。

2 事案の概要

AさんはY社に入社後、経理を中心に長年真面目に勤めていましたが、ある日退職に追い込まれ、さらには、突然Y社から高額の損害賠償請求訴訟を起こされてしまいました。その金額は4000万円を超えています。

しかし、Aさんはもちろん何も悪いことなどしていません。すべて会社や代表者の指示に従って業務を行い、誠実に勤務してきました。会社としても、記録を調べればAさんが何も悪いことをしていないということは簡単に理解できたはずです。それなのにY社は、Aさんが悪いことをしたというありもしない事実を「作り上げ」て、これほど多額の請求をしてきたのです。

経済的に苦しい中、Aさんは弁護士に依頼して毅然と闘うことを決めました。そして、Y社の請求は不当訴訟であるとして逆に損害賠償を求める反訴を提起したのです。

3 裁判所での闘い

手持ちの資料がほとんどなく、裁判には苦労が伴いましたが、第一審は、Aさんは会社の指示で誠実に業務を行っていたとしてY社による本訴を全面的に棄却しました。しかし、その一方で、Aさんの起こした反訴も棄却してしまいました。Aさんの行状について一応調査をしていたから、不当訴訟であるとまではいえないというのです。しかし、Y社はAさんが何も悪いことをしていないということを知りながら、架空の事実をでっち上げて裁判を起こしているのです。形だけの調査をすれば済むというようなレベルの問題なのでしょうか。

双方が控訴して舞台は広島高裁に移りました。そして下された判決は、Y社の請求を改めて完全に棄却し、他方でAさんの反訴を認容して、Y社に対し損害賠償を支払うよう命ずるものでした。その理由づけはシンプルなもので、「Y社が主張したAさんに対する不法行為による損害賠償請求権は、事実的・法律的根拠を欠くものであり、かつ、Y社は、その請求が事実的・法律的根拠を欠くことを知りながら又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて訴えを提起した、と認められ、訴訟の提起自体が、裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くものであり、不法行為を構成する」というものです。シンプルなだけに、説得力があるといえるでしょう。

4 ブラック企業と毅然と闘おう!

高裁判決は、会社から極めて高額の請求をされ苦しめられてきたAさんにとって大きなクリスマスプレゼントになりました。私自身も、資料の少ない中で苦労して主張・立証を重ね、広島まで繰り返し足を運んだだけに、喜びもひとしおです

また、この判決は、ブラック企業の要求を毅然と拒絶することの大切さ、毅然と拒絶していれば必ず裁判所も認めてくれるということを示したともいえるでしょう。不当な要求に屈することなく、労働者一人ひとりの権利と生活を護っていくために、これからも全力を尽くしたいと思います。

担当弁護士:村山 晃、谷 文彰