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建設アスベスト被害に対する国の賠償責任が最高裁で確定~労働者・一人親方(個人事業主)を広く救済~

届いた最高裁の決定

本年12月15日、最高裁判所から、「国の上告受理申立を上告審として受理しない」という決定が届きました。決定は14日付。建設アスベスト被害に関する国の賠償責任が、労働者だけでなく一人親方(個人で仕事を請け負う個人事業主や零細事業主など)との関係でも広く認められ、確定した瞬間です。

労働者も一人親方(個人事業主も)も等しく救済

建設現場で大工や左官などとして働き、建材に含まれるアスベスト(石綿)を吸い込んで肺がんや中皮腫などの重篤な病気にかかってしまった方やそのご遺族が、危険性を認識しながら規制を怠ってきた国と、危険なアスベストの含有された建材を製造・販売してきた建材メーカーの責任を問うて初めて訴訟を提起したのは2008年のこと。それから12年かかり、ようやく、まず国の法的責任が確定したことになります。

建設アスベスト訴訟は全国各地で闘われていますが、今回の最高裁の判断は東京一陣訴訟に関するものです。同訴訟については2018年3月14日に東京高等裁判所で判決が出され、国との関係では、労働者に対する責任のみを認めた東京地裁判決を変更し、一人親方に対する国の責任をも認めました。一人親方に対する国の責任が認められたのは一連の訴訟で初のことであり、原告337名中327名に対し、総額22億8147円余りを支払うよう命じました。

この東京高裁判決を不服として国が上告受理申立をしたのですが、今般、最高裁は、その上告受理申立を最高裁判所として審理しないと決定したため、東京高裁判決が正式に確定し、よって国の上記賠償責任も確定したというわけです。

労働者であるか個人事業主であるかを問わず、建設現場で働いてアスベストによる病気にかかってしまった方が広く救済される結論となったことは非常に大きな意義があります。また、いわゆる泉南アスベスト訴訟に引き続いてアスベスト政策に関する国の誤りが断罪されたことも画期的なことであり、全面救済に向けた取組みが求められています。

国は、今回の最高裁の決定について、「重く受け止める。関係省庁と協議、検討したい」とコメントしたようですが、まず第一に被害者に真摯に謝罪すべきです。そのうえで、賠償責任を果たすとともに、きちんとした救済制度を原告側の意見も踏まえて速やかに構築するべきです。

1975年から2004年までの間に働いた方が救済対象

今回の最高裁の決定により、違法期間は1975年10月1日から2004年9月30日までと確定しました。本判断枠組みによれば、この期間中に建設現場で働き、肺がんや中皮腫などのアスベスト由来の病気にかかった方やそのご遺族は、国から賠償金が得られる可能性があります。

既にB型肝炎やC型肝炎などの被害では救済枠組みが成立していますが、今後建設アスベスト被害についても枠組みが作られていくものと思われます。

建材メーカーの責任も広く認められる見込み

2018年3月14日の東京高裁判決は建材メーカーの責任を認めておらず、この点では不当な判決でした。そこで原告側から上告受理申立をしており、最高裁は、同じく12月14日付で、原告側の上告受理申立を上告審として受理するとの決定を出しています。

今回受理された部分は、職種でいうと大工や左官など20職種、建材メーカーでいうとニチアスやエーアンドエーマテリアル、ノザワなど12社についての部分ですから、建材メーカーの責任もかなり広く認められるのではないかと思われます。

京都訴訟も大詰め

最高裁には東京一陣訴訟だけではなく神奈川一陣訴訟(10月22日に弁論が開かれ判決は「追って指定」)、京都訴訟(弁論未定)、大阪訴訟(同)、福岡訴訟(同)も係属しており、遠くないうちに最高裁が何らかの判断を示す可能性があります。

国や建材メーカーの責任を明らかにし、被害者が救済されるよう、まだまだ頑張りたいと思います。