活動紹介

建設アスベスト訴訟における建材メーカーの責任が最高裁でついに確定!

1 国と建材メーカーの責任が確定した最高裁の決定

本日2021年1月29日、最高裁判所は、関西建設アスベスト京都訴訟において、大阪高裁で敗訴し上告していた国と企業8社(10社中)の申立てを棄却する決定を下しました。これによって、建設アスベスト被害に関して初めて建材メーカーの責任が広く確定したことになり、極めて大きな意義があります。

2 建材メーカーの責任について

今回責任が確定した建材メーカーは、エーアンドエーマテリアル、太平洋セメント、ニチアス、日鉄ケミカル&マテリアル、大建工業、ノザワ、MMK(エムエムケイ)、日本バルカー工業の8社です。これらの建材メーカーは吹付材やボード類などのアスベスト含有建材を長年にわたって製造・販売し、かつ、いずれのメーカーも建材市場において大きなシェアを有していました。当然、これらのメーカーのアスベスト建材を使用した建設作業者はたくさんおられます。そうした方々との関係で、最高裁判所が、シェアを1つの大きな拠り所として賠償責任を認めたということは、いま被害に苦しんでおられ、また今後も出てくるであろう被害者の救済にとって決定的に重要です。

また、吹付材の主要なメーカーの責任が認められたことも重要です。吹付材は総じてアスベストの含有量が多く、しかも飛散性が高いため、とりわけ危険性が高いとされてきたためです。しかしこの吹付材メーカーについては、これまでの下級審判決では十分に責任が認められないことが多くありました。シェアが不明であったり、注意義務違反を問える時期には製造・販売を終了しているといったことが理由に挙げられていました。けれど、京都訴訟の地裁判決・高裁判決は、これらの点について、シェアは判明している、製造・販売した時期には注意義務違反が認められるなどと判断しており、それが最高裁で維持されたことから、アスベスト被害の発生に重大な責任のある吹付材メーカーの法的責任が明確になりました。

これまで建材メーカーは「被害を発生させた建材やメーカーが具体的に特定されていない」として言い逃れを続け、救済に応じず、それどころか話にすらなかなか応じようとはしませんでした。最高裁はこうした建材メーカーの姿勢をも断罪したのです。被害休止には一刻の猶予もありません。直ちに動き始めるべきです。

3 国の責任について

また、国との関係では、1人を除いて国の賠償責任が確定しました。12月に東京ルートの高裁判決に関して既に国の責任が確定していましたので、それと同旨の判断になります。労働者ではない個人事業主などの関係でも賠償責任を負うことが改めて明確となったのであり、意義のあることです。

そして、重要なのは、1975年よりも前の時点での国の責任を認めたと考えられる点です。これまでの流れでは、1975年以降に関して国が責任を負うことは示されていましたが、それよりも前の時期については判然としていませんでした。今回の決定によってそれ以前の時期に国が責任を負うことが示されたのであり、それだけ救済の範囲が広がることになるため、大きな意義があります。

4 被害救済に取り組み続けます

最高裁の決定が届いた1月29日は、奇しくも、建材メーカーの責任を初めて認めた京都地裁判決(今回の最高裁決定のもとになった判決)が下された2016年1月29日からちょうど5年になります。建材メーカーの責任が初めて断罪された京都訴訟で、建材メーカーの責任が初めて確定したこと、しかも丸5年を経た同じ日であること、不思議なものを感じます。

アスベスト被害についての国と建材メーカーの責任は、大枠が確定しました。しかし被害は終わりません。京都訴訟もすべてが終結したわけではなく、まだ最高裁の判決も控えています。各地で新たな訴訟も提起されており、京都地裁でも裁判が進行中です。アスベストの被害は極めて深刻なものです。命を奪われる方も後を絶ちません。1人でも多くの方が、お元気なうちに救済されるよう、これからも全力を尽くさなければなりません。

建設現場で働いておられた方、肺がんや中皮腫などで闘っておられる方、いつでもご相談ください。