特別受益と寄与分
相続
6.特別受益と寄与分
相続財産の額を決定するにあたっては、現に存在する財産のほかに、特別受益や寄与分が考慮されることも少なくありません。
例えば、被相続人が父、相続人が子ども3人である場合で、長男が家を建てる際に父から300万円の贈与を受けていた場合には、この300万円は遺産の前渡しとして計算上遺産の中に含めることになります。死亡時に父の遺した預貯金等の財産が1500万円だったとすると、長男への300万円を含めた1800万円が計算上の遺産となります。したがって、子らの各相続分は1800万円の3分の1にあたる600万円となりますが、長男については生前に300万円をもらっているので、相続時に取得できるのは残金の300万円だけになります。
2019年相続法改正で「特別受益における持ち戻し免除の推定規定(新:民法903条4項)」が新設されました。
このような場合、共同相続人の中に、被相続人から「遺贈」や「生前に、婚姻、養子縁組のためや生計の資本として遺産の前渡しとなるような多額の贈与を受けた者」がいる場合は、遺産分割の際に、上記の「遺贈」や「贈与」の額を遺産に加えて計算し、遺産分割をするのが原則です。
① 上記のような「遺贈」や「贈与」のことを特別受益と言い
② 遺産の計算に加えることを「持ち戻し」といいます。
③ 特別受益を遺産の計算に加えなくてもよいとすることを「持ち戻し免除」と言います。
(遺産総額の原則的な計算式)
みなし相続財産=相続開始時の遺産の評価額―寄与分+特別受益
持ち戻し免除の推定規定の具体的な要件
特別受益については、それが特別受益であるか否かも争いになりますが、「持ち戻し免除の意思表示があるかどうか」についても意思解釈が争いになり、今までは、特別受益いずれの場合でも「持ち戻し免除の意思表示がある」と主張する側が証明しなければなりませんでした。
しかしながら、2019年改正では、前述改正の趣旨から、以下の要件を満たす場合は、持ち戻しの免除意思を推定するとしました。これによって、これまでは、特別受益者の方に持ち戻し免除の意思表示があったことを証明しなければなりませんでしたが、今回の改正では、特別受益者以外の相続人で、持ち戻しを主張する側が「免除の意思表示のないこと」を証明しなければならなくなりました。
要件
① 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方が他の一方に対し
② その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたもの
適用
施行日(2019年7月1日)より前にされた遺贈又は贈与については適用しない。
寄与分が認められるためには、単に親と同居して面倒を見ていたというだけでは足りず、具体的に財産の増加・維持に特別に貢献していたと認められなければなりません。例えば、被相続人である父親を相続人である子どもの1人が介護していたという場合、介護の具体的な内容、相続人が介護しなければ必要であった付添人の費用等から、総合的に判断することになります。